2013/7/1

「目を覚ました」
そういう表現が適確に思える。
私は何か誰かを理由にして見て見ぬ振りをしていなかっただろうか。
私はまだまだ強くなる。
この程度ではない。
彼には千太郎(せんたろう)という名をつけた。
字画でいうとあまり良くはないようだ。
生後まもなく彼の母親が気付いた左眼の白点。母の観察眼とやらにはおそれいる。
数日前、専門医の痛々しい検査により先天性白内障と診断された。
診断はあっけないほどの即断だった。
癌の想定もしていたため、不幸中の幸いと呼ぶべきかもしれない。
先天性のそれは、一般的な白内障とは全く扱いが違ってくる。
手術をし、水晶体を取り除くなら生後1ヶ月がリミット。
濁りが全体に及んでいないから、訓練次第では手術をしなくてもボンヤリ見える可能性も若干ある。
術後の合併症の可能性を考えると彼の持ち合わせている能力にかけてみたい。
眼鏡補正がきくのなら、さしたる問題はないのだが、近視や遠視とは根本原因が異なるのだからそんなわけにもいかない。
とにかく力強く生きて欲しい。
片眼がさして見えなくても、ものともしない強さを。
そもそも眼球に頼る見え方だけが全てではない。
心の眼を養い、本質を見て欲しい。
「千里眼」から「千」のひと文字をもらうことにした。
「千太郎」
父である私が人間というやつの力強さを見せてやろう。
君のその片眼と心の眼でしっかり捉えるといい。
それが君に伝えることの出来る唯一であり全てだから。

> 田中英一のコトバ